乳幼児の肌トラブル関連のQ&A

肌のぶつぶつがあります。どこを注意してみたらいいですか?

肌のぶつぶつの診断は実はとても難しく、診察室でも悩むことが多いものです。私たちは、お子さんの年齢、熱の有無、急にできたものか以前からあるものか、発疹の分布、発疹のみため、かゆみ有無、季節(湿度)、周囲の流行などのたくさんの情報を組み合わせて、お子さんのぶつぶつの診断をしています。

乳幼児の肌トラブル関連

上の図はこどもによくできるぶつぶつを好発年齢と熱の有無で分けた図です。熱があるかどうか、また急に広がってきているかどうかは診断のためにとても大事な要素ですので、新たに発疹に気がついたら広がってこないかどうかと、熱の様子をぜひみてあげてください。

広がってきたり、熱がある場合には病気の可能性がありますので、早めの受診をおすすめしています。

肌のぶつぶつはどんなときに受診をした方がいいですか?

たくさん原因のあるぶつぶつ。受診が必要かどうか悩まれるのも当然です。

絶対に受診が必要なのは熱が続いている状態で、ぶつぶつが出ているときです。川崎病・溶連菌・アデノウイルスなどの病気の可能性がありますので、判別のため早めに受診することをおすすめします。夜間帯は呼吸が苦しそうな様子などなければ、翌日受診で大丈夫です。

また、熱が出る場合と出ない場合がありますが、赤い発疹が2−3日で急に広がる場合には受診をおすすめしています。水痘(お腹や背中から手足・顔・頭皮に広がる)や手足口病(手足、おしりの発疹)、りんご病(ほほと手足の発疹)、とびひ(鼻の下、脇の下、触りやすい部分)の可能性があります。受診により水痘やとびひは治療薬が処方可能です。また、水痘は感染力が強く登園(登校)停止対象で、治癒後は登園許可も必要です。手足口病は喉の痛みで経口摂取が進まなくなることがしばしばあります。とびひも同一のタオルを使うなどの接触で容易に感染が広がるため接触感染対策が必要になります。

6か月から3歳くらいで熱が下がって、発疹が出てきて広がる場合には突発性発疹の可能性が高いです。機嫌が異常に悪くなりますが、この病気の特徴ですので、受診は不要です。

では、熱がないケースはどうでしょう。

生まれたばかりの赤ちゃんは生理的な脂漏性湿疹の可能性が高く、生後2−3ヶ月の乳児は乳児湿疹の可能性が高いです。ジクジクしたり、かゆみが強かったりしたら受診をおすすめします。それ以外の場合には自宅で保湿によるスキンケアで様子をみて大丈夫です。保湿剤はワセリンや市販のベビーローションで大丈夫です。



乳児が離乳食を食べて5−30分後くらいに顔から首、体にかけてふくらんだ赤い発疹がでてくる場合には、アレルギーの可能性があります。受診をおすすめします。 発疹とともに呼吸が苦しそうなとき、顔色が青白くなるとき、我慢できない腹痛・繰り返す嘔吐があるときには救急車を呼んでください。すぐに受診できない夜間帯などは、息苦しさがなく、機嫌が保たれていれば、写真を撮っておいて、翌日受診でも大丈夫です。

離乳食をはじめたころに口周りにふくらみのない赤い発疹ができることはよくあります。これはアレルギーが原因ではなく、初めて食べる食べ物による物理的な刺激やよだれによる刺激によることが多いです。食事の前にワセリンで保護をし、食事後に水拭きをしてあげ、また保湿をすることをおすすめしています。数ヶ月で落ち着いてくることが多いです。

虫刺されはこどもは大人に比べて強く腫れることが多いです。また、体温が高く・代謝がよくて汗もかきやすいため大人より刺される数も多いです。中心部がジクジクして膿みが出たり、深いクレーターのようなものができる場合には受診してください。多くの場合受診は不要で、市販の痒み止め、手持ちのステロイドを使って大丈夫です。

アトピー性皮膚炎は慢性的なかゆみを伴う湿疹が広い範囲でよくなったり、悪くなったりを繰り返しながら出ます。特に、膝のうしろ、足首、ひじの内側、耳の後ろや指先などに湿疹が出ることが多いです。かゆみがあり、日常的にかいている様な状態の場合には保湿剤 に加えてステロイドの治療をおすすめします。

赤ちゃんの肌にブツブツがあるけどどうしたらいい?

赤ちゃんの肌はすべすべでブツブツ一つないイメージがありますが、1ケ月健診で一番質問が多いのが、顔のブツブツに関する相談です。

 

生まれて1週間前後で顔に赤または白いポツポツが出てきます。これは新生児ざ瘡という赤ちゃんのニキビです。ホルモンの影響と考えられています。2ケ月くらいで自然によくなってくることが多いですが、石鹸でよく洗って汚れを落としましょう。


生後数週から数ヶ月に頭や顔などに黄色いかさぶたができるのが、乳児脂漏性湿疹です。こちらもホルモンの影響と考えられています。お風呂に入る前に、オリーブオイルやベビーオイルでかさぶたを柔らかくし、よく泡立てた石鹸で洗うと良いです。無理に剥がそうとゴシゴシ洗ったりしないでください。こちらも2−3ケ月でよくなってくることが多いです。アトピー性皮膚炎と症状が似ていることもありますが、脂漏性湿疹はアトピー性皮膚炎にくらべ痒みが少ないです。


生まれて1−2ケ月は皮脂の分泌が多いですが、少し成長した3−4ケ月の赤ちゃんの肌は、逆に乾燥しやすくなります。特に秋生まれの赤ちゃんは乾燥が強い冬の時期に生後3−4ヶ月頃になるため、アトピー性皮膚炎の発症頻度が高いことが報告されています。生後早期からしっかり保湿を行うことをおすすめします。乾燥が強く、赤みがあるような場合には、入浴の際に石鹸を使用する頻度を減らしたり、刺激の少ない石鹸を選び、皮脂が必要以上に流れてしまうのを防ぐと良いでしょう。


乳児のアトピー性皮膚炎は、2−3ケ月頃から始めることが多く、顔、頭から始まることが多いです。痒みが強く、赤ちゃんは顔や頬を頻回に引っ搔いたり、頭や体を抱いてくれる人の衣類や枕にこすりつけたりします。脂漏性湿疹は顔だけが多いですが、体や手足に赤みや発疹が広がる場合、2ケ月以上続く場合にはアトピー性皮膚炎を考えます。ケアで一番大事なことはしっかり保湿を行うこと。痒みが強い場合には炎症を抑えるステロイドを使用します。皮膚を清潔に保つため、よく泡立てた石鹸で洗いましょう。

授乳中のお母さんの食事制限はこれらのケアを十分に行っても改善がなく、かつお母さんが食べたもので赤ちゃんの皮膚症状が悪化するのが明らかな場合だけで、多くの場合不要です。乳児のアトピー性皮膚炎は2歳頃までには良くなることが多いですので少し長い目で見てスキンケアを続けて下さい。

ステロイドを処方されたけれど、こんなに塗っても大丈夫? 副作用が心配。

アトピー性皮膚炎や、乳児の湿疹で赤みが強いとステロイドが処方されることがあります。ステロイドは怖いイメージがありますが、きちんと使えばお子さんの痒みを抑えてくれる非常に良い薬です。


ステロイドを塗る時の量の指標が示されています。大人の人さし指の一番先から第1関節に乗る量で、大人の手のひら2枚分くらいの面積を塗ることができます。この指先から第1関節に乗る量を1FTU(フィンガーチップユニット)として、おおよそ0.5gに相当します。

生後3ヶ月から6ヶ月くらいの赤ちゃんの場合、腕と足と体を同じレベルのステロイドで全身使用した場合、1回に7.5FTU(3.75g)/ 回使用することになります。ステロイド1本が5gの場合にはおよそ3日で2本は使用する計算になります。これが全身に使う場合の標準の量です。実際には足の裏や手のひらなど発疹の出にくい場所もあり、使用量はもう少し少ないことが多いですが、みなさんが想像しているよりずっと多い量がガイドラインで示されている量なのです。

初期にはしっかり使って痒みを抑え、症状が落ち着いてきたら徐々に範囲を減らす。良くなったら中止するのではなく、1日1回を2日に1回、3日1回と少しずつ間隔を開けて、減らしていくことをおすすめします。

我が家のこどもも生後3ヶ月頃から全身に発疹が出て、乳児アトピー性皮膚炎と診断されました。赤ちゃんが夜、頭を枕にこすりつけて寝る姿を見るのはつらかったです。FTUの方法に従って、しっかりステロイドを使いながら保湿を行いました。痒みが落ち着いて、少しずつステロイドを減らすことができ、保湿だけに切り替え、2歳頃には時々保湿をするくらいになりました。


ステロイドの使用やスキンケアの方法で不安がある場合にはぜひご相談ください。