火曜日のアレルギー外来・漢方外来を担当している川島と申します。
私自身も、小1と年少の2児を子育て中で、2人とも気管支喘息や食物アレルギーを抱えています。様々な疾患を抱えたお子さんや、育児をしている親御さんの不安や苦難に寄り添いつつ、少しでも負担を軽減したいと思いながら日々診療しております。
新型コロナ感染拡大の影響で、自粛生活が余儀なくされる中、普段よりもお子さんと一緒に過ごす時間が増えた家庭も多いかと思います。
お子さんとの時間が長くなると、些細なことでイライラしてしまったり、叱ったことで落ち込んでしまったり、負の感情も増えてくるのが当然のことかと考えています。
お子さんにとっては、やっぱり、一番長く一緒にいる親御さんの笑顔が一番で、親御さんの様々な表情を、かなり敏感に感じ取っていることも事実です。そこで、ストレスによる免疫力を低下させないよう、お子さんだけでなく、親御さんの健康を維持する上でも、漢方療法はお勧めです。
漢方療法は、様々なイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、元々は中国由来の伝統医学が、(およそ2000年以上もの)長い歴史の中で日本人の体質や環境に合わせて日本独自に発展してきた日本の伝統医療です。
『未病を治す』(病気になる前から予防する)という考え方や、『心身一如』(体と心は一体である)という全人的医療の考え方が基本になっており、一人一人の体質(=証)に合わせたオーダーメード医療です。
すでに罹った病気を治療する、臓器別に診る、エビデンス(医学的根拠)や疾患名に基づいた治療を優先する西洋医学の考え方とは異なる観点があります。様々な生薬の組み合わせで成り立つ漢方薬には、体質を変えるのではなく、本来その人が持っている力(自然治癒力)を最大限に発揮できるよう心身の状態(バランス)を調整する働きがあります。
コロナ感染が広がる中、もちろん感染しないことが一番ですが、もし感染したとしても、コロナに打ち勝つ体づくりや、免疫力を高める(低下させない)ことも大切です。
漢方薬は、西洋薬と比較すると副作用も少ないため、お子さんにはもちろんですが、親御さんにもお勧めです。親御さんが漢方薬の効果を実感して、積極的に内服できると、お子さんにも飲ませやすくなるかと思います。漢方療法にご興味がある方はぜひ、どんなことでもご相談ください。
【漢方療法の適応】
漢方療法は一人ひとりの体質に合った薬で、体の歪みを調整し、心身のバランスをはかります。 次のような症状や疾患は漢方療法に向いています。詳細な問診を基に、長期化する症状に対しては、薬物療法だけでなく、生活習慣の見直し、食事指導なども行っていきます。
・ 風邪の初期~回復期(時期によって処方が異なります)
・ アレルギー症状: アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息・慢性蕁麻疹など
・ 胃腸症状: 食欲不振、便通異常、胃もたれ、嘔吐、過敏性腸症候群 など
・ 女性: 月経痛・月経不順・不妊症・更年期障害 など
・ 自律神経失調症(頭痛、めまい、不眠・不安・イライラなど)
・ にきび・慢性湿疹などの皮膚トラブル
・ 頻尿・夜間尿などの泌尿器系トラブル
・ その他: 冷え性、むくみ、肩こり、慢性疼痛(腰痛・関節痛など)、疲れやすい、・風邪をひきやすい など
・ 小児: 風邪をひきやすい、胃腸の不調(便秘・少食・食欲にムラがある)、チック、夜尿症・夜泣き・周期性嘔吐症 など
「なんとなく調子が悪い」「イライラする」「不安を少しでもやわらげたい」でも大丈夫です。ぜひ、ため込まずご相談ください。
川島医師の漢方外来・アレルギー専門外来は 毎週火曜日10:00-12:00です。
WEBで予約が可能です。
当院に受診することが難しい方のために、以下に一般的な処方例を記します。ドラッグストアなどで購入できる漢方薬もありますので、ご自身で購入する際には参考になさってください。
尚、漢方薬にも適用量や副作用がありますので、迷った場合にはかかりつけ医または薬剤師にご相談ください。
【漢方薬の具体例】
- 風邪
・葛根湯[カッコントウ](風邪の初期、体力あり・胃腸丈夫)
・桂枝湯[ケイシトウ](風邪の初期、胃腸虚弱・比較的体力弱)
・小柴胡湯加桔梗石膏[ショウサイコトウカキキョウセッコウ]
(咽頭痛・微熱・風邪の数日後~1週間程度)
・柴朴湯[サイボクトウ](長引く咳・微熱)など
・小青竜湯[ショウセイリュウトウ](水様鼻汁・くしゃみ・風邪の初期)
・麻黄附子細辛湯[マオウブシサイシントウ](冷え++、)
・真武湯[シンブトウ](冷え・胃腸虚弱、下痢)
- 急性胃腸炎
・五苓散[ゴレイサン](嘔気・嘔吐、尿量減少)、
・柴苓湯[サイレイトウ](微熱、下痢)
・人参湯[ニンジントウ](冷えが強い・嘔気・下痢)
・真武湯[シンブトウ](下痢・冷え、全身倦怠感が強い)
・小建中湯[ショウケンチュウトウ](腹痛あり、元々胃腸が弱く風邪を引きやすい)
- 胃症状
・六君子湯[リックンシトウ](食欲不振、胃もたれ・胃重、気力が出ない、苦味が苦手)
・半夏瀉心湯[ハンゲシャシントウ](げっぷ、胃酸多い、過食後に下痢、苦味OK)
・柴胡桂枝湯[サイコケイシトウ](感冒性胃痛、ストレス性の胃痛・便通異常も伴う、シナモンOK)
・安中散[アンチュウサン](胃痛、げっぷ、冷え+)
- 便秘
・小建中湯[ショウケンチュウトウ](小児、風邪を引きやすい、少食、食欲にムラがある)
・大建中湯[ダイケンチュウトウ](下腹部の張り・冷え、腹痛)
・麻子仁丸[マシニンガン](比較的高齢者の便秘)
・桃核承気湯[トウカクジョウキトウ](比較的体力のある女性、月経トラブル伴う)、
・大黄甘草湯[ダイオウカンゾウトウ](頑固な便秘、他に症状なし)
- 頭痛
・五苓散[ゴレイサン](気圧変化や入浴により悪化、頭重・むくみを伴う)
・葛根湯[カッコントウ](肩こり、緊張性頭痛、胃腸は丈夫)
・柴胡桂枝湯[サイコケイシトウ](ストレス性)
・呉茱萸湯[ゴシュユトウ](首凝り、冷え・嘔気を伴う、大変苦い!)
・半夏白朮天麻湯[ハンゲビャクジュツテンマトウ](慢性頭痛、めまい、頭重を伴う)、
・当帰芍薬散[トウキシャクヤクサン]・加味逍遙散[カミショウヨウサン]・桂枝茯苓丸[ケイシブクリョウガン](月経関連、肩こり・頭重感を伴う)
- めまい
・苓桂朮甘湯[リョウケイジュツカントウ](回転性・動悸を伴う)
・半夏白朮天麻湯[ハンゲビャクジュツテンマトウ](胃腸虚弱、気力弱い、非回転性)
・当帰芍薬散[トウキシャクヤクサン](貧血傾向、月経関連、クラっとする)
・真武湯[シンブトウ](倦怠感、冷え、体力低下)
- 乗り物酔い
・五苓散[ゴレイサン]・苓桂朮甘湯[リョウケイジュツカントウ] など・・・30分前に服用
- アレルギー性鼻炎
・小青竜湯[ショウセイリュウトウ](喘息合併例、比較的胃腸が丈夫、味が酸っぱい)
- 慢性鼻炎・副鼻腔炎
・葛根湯加川芎辛夷[カッコントウカセンキュウシンイ](鼻閉・肩こり)
・辛夷清肺湯[シンイセイハイトウ](鼻閉・膿性鼻汁)
・排膿散及湯[ハイノウサンキュウトウ](膿性鼻汁、胃腸が弱くても内服可)
- 咽頭痛
・桔梗湯[キキョウトウ]・桔梗石膏[キキョウセッコウ]
→湯に溶かして、うがいしながら内服すると効果的
- 長引く咳
・麦門冬湯[バクモンドウトウ](痰が切れにくい、のどの乾燥)、
・柴朴湯[サイボクトウ](のどの違和感、痰が絡む)
- 疲れやすい、風邪を引きやすい
・補中益気湯[ホチュウエッキトウ](胃腸が弱い)
・十全大補湯[ジュウゼンタイホトウ](貧血傾向あり・胃腸は比較的丈夫)
- 不眠
・半夏厚朴湯[ハンゲコウボクトウ](不安感・咽頭違和感)
・抑肝散[ヨクカンサン]・抑肝散加陳皮半夏[ヨクカンサンカチンピハンゲ](興奮傾向、イライラ・歯ぎしり・肩こり)
・酸棗仁湯[サンソウニントウ](ストレスによる、疲れやすい)
- 水いぼ
・ヨクイニン(ハトムギ)
- 足がつる・こむら返り
・芍薬甘草湯[シャクヤクカンゾウトウ](必要時に頓服薬として使用)
- 夜尿症
・小建中湯[ショウケンチュウトウ](小児のやせ・冷え・便通異常・緊張傾向)、
・抑肝散[ヨクカンサン]・抑肝散加陳皮半夏[ヨクカンサンカチンピハンゲ](イライラ・抑うつを伴う)